2018年 師走 [新時代を迎える心得]
新時代を迎える心得
前略 貴社、貴会におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
今年も残りの日数を数える時節となってまいりました。そして、平成もあと四箇月余りを残すのみとなりました。天皇陛下が来年四月三十日に御退位されその大役を終えられます。
次の元号はどんな名称になるのでしょうか。平成三十年は幾多の天災に見舞われ甚大な被害が西日本で発生したこともあり、「安」が入った元号を期待する人も多いようです。
両陛下はこれまで東北や熊本などの被災地を訪問し、被災者に寄り添い励ますという活動を積極的に行ってこられました。弊社にも岡山県真備町の実家が甚大な被害を受け、多くの近隣住人が犠牲になった社員が在籍し、この地にも慰問に訪れられました。
また両陛下はこれまでにすべての都道府県に二回以上、そして沖永良部島など五十五の離島を訪問しておられます。日本の隅々まで、ともすれば忘れ去られたような僻地にも足を運ばれ、御自分の目であらゆる地に住む日本人が不自由なく暮らしているかを確かめるかのように訪問を続けてこられました。その中には、障害者などの福祉関係施設へは通算五百箇所以上の訪問、すべてのハンセン病療養所十四箇所への慰問なども含まれています。そして、ペリリュー島やサイパンのバンザイクリフなど海外の戦跡への慰霊の旅も続けてこられました。陛下は御自分の意志でタイムリミットを設定し、残りの限られた時間の中で御自身の目指すべき象徴天皇としての活動を実践してこられました。
避難所や仮設住宅への慰問の際には、被災者の前に正座され励まされたことや、長年に渡り理不尽な法律・制度のもと家族や社会から隔離され差別されてきたハンセン病療養所の入所者の方の指のない手を握って励まされたことで、どれだけ彼らの心が救われたことでしょう。利害や人気取りなどの邪心のない、国民の安寧のみを純粋に願う天皇であるからこそ、どん底に落ちた人々が両陛下とお会いし、この上ない励ましと生きる力を頂くのだと思います。
海外に出かけた時、日本人というだけである種の尊敬を受けたり便宜を受けたりできる理由の一つは、皇室外交のすばらしさと、天皇皇后両陛下が長きにわたって日本人の美徳、あるべき姿を体現してこられたことによると思います。それによって受けている恩恵を我々は歴史の節目に際し、改めて再確認し国民全体として長年のご苦労に感謝したいと思います。
近年になって日本のみならず、世界各地でこれまでに例を見ない規模の自然災害が発生しています。世界規模の気象変化や地球温暖化による自然災害は、来年以降もいつ何時でも起こりうることとして想定しておかなければなりません。こればかりは神仏に祈っても防ぐことは不可能です。言い換えれば自然災害も含めて地球上で起こることすべてが神の意志であると考えるべきでしょう。自然災害が起こらぬことを祈るのではなく、国民の心構えと準備対策を着実に実行することで犠牲者のでない災害に強い日本を作り上げていくことを目指してまいりましょう。
来る年と新しい時代が、皆様と我国にとりまして更なる平和と繁栄の幕開けとなりますよう御祈念
申し上げます。
草々
平成三十年 師走
株式会社ミヤコ国際ツーリスト
代表取締役 松井秀司